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ガバナーからのメッセージ  <第11回>

「めぐる歯車」

 長い冬を終えて、春を待ちわびていた花々が1度に開く北国の目くるめく ような季節がやってまいりました。おかげさまで我々のロータリー年度もゴ ールまで後2ヶ月となりました。RI会長のステンハマーさんは、ロータリー 史上最高の標語「超我の奉仕」というテーマを我々に示されました。「ロー タリー奉仕の新世紀」という歴史に残る新たなスタートの年に、ガバナー補 佐の皆さん、会長・幹事の皆さんと共にこのテーマに沿って奉仕の一歩を踏 み出せたことを誇りに思います。公式訪問では、会長・幹事さんとひざを交 えてお話し合が出来ました。ロータリーを取り巻く環境は厳しいものがあり ます。その中で、会長・幹事さんはクラブ運営に知恵を出し合いながら、奉 仕の理想を推進されておられることを知り深く感動しました。

 ロータリーの最大の特徴は毎年、役目がローテーションすることです。 「職業分類制度」と「例会出席の義務」、そしてこの「交代制度」のおかげで ロータリーは100年の歴史を重ねることが出来ました。国際ロータリー会長 の任期も1年、地区ガバナーの任期も1年、クラブ会長さんの任期も1年で す。ただ幹事さんだけは例外で何年続けて幹事の役職を勤められてもかまい ません。アメリカのクラブでは幹事歴任50年というロータリアンが表彰され ました。またロータリーのビルダーと言われたチェスレィ・ペリーはRIの事 務総長(幹事)を32年間務めました。このような例外もありますが、原則とし てRI会長もガバナーもクラブ会長・幹事さんも毎年新人です。毎年新たなRI のテーマのもと、みずみずしい初心を持って奉仕の道を歩んでもらいたいの です。ロータリーのような組織にとって一番の大敵は馴れるということです。 マンネリはロータリーへの参加意欲を殺ぎます。営利を求める企業の場合な ら馴れたベテランに何年でも同じポジションを務めてもらったほうが有利で すが、ロータリーのような非営利の団体は必ずしも奉仕プロジェクトの効率 を追求しません。ロータリーは全会員がローテーションしてフレッシュな気 持ちで四大奉仕部門はもちろん、クラブ、地区役員の任務を経験してほしい のです。全ての奉仕部門を経験して、奉仕の心を涵養してもらうのが狙いで す。ロータリーは1年ごとにローテーションしますので、就任前の研修を入 念に行います。クラブ運営について会長・幹事さんは次期の会長・幹事さん よりいろいろ相談を受けられていることと思いますが、どの家にも家風があ るようにどのクラブにも歴史と伝統を踏まえた良き美徳があります。新しい 酒は、新しい皮袋にと云いますが、その伝統の上に立って新しい活動を盛り 込むようにアドバイスしてください。急な改革は革命と等しく情緒的結社で あるクラブにはそぐいません。また大事なことは、ロータリーはその役職が 終ると元の一会員に戻るのが原則です。たまに、役職が終っても次代へあれ これ口出しする人がいます。ロータリーでは院政を布くことはタブーです。 私もガバナーを終えたら元のクラブの一会員になり、微力ながら奉仕のお手 伝いをさせていただくつもりです。

 ロータリーソング「奉仕の理想」の中に《めぐる歯車いや輝きて》とある とおり、ロータリーの歯車は100年の間めぐり続けてきました。歯車は軸が ぶれては機能しません。世の中の現象には「時代を超えて変わるもの」と、 「時代を超えて変わらないもの」があります。歯車の軸とは、言い換えれば ロータリーの中核思想です。つまりロータリーの綱領のことであり、もっと 具体的に云えば「職業奉仕」のことです。重要なことはひとりひとりのロー タリアンがロータリーの「職業奉仕」を推進することです。ロータリーのプ ログラムが時代とともに如何に多岐に亘ろうとも、我々は所詮この出発点に 戻らざるを得ません。我々は将来何が待ち受けているか知る由もありません。 しかし我々はロータリーの「職業奉仕」を歯車の不動の軸として持つことに より、これからも確信を持って前進することが出来るということだけははっ きりと知っています。

 私は光栄にも新世紀(101年目)ロータリー幕開けの地区指導者に指名してい ただきました。幸いなことはロータリー100年の歴史を振り返り、総括する ことが出来ることです。およそ人類文化史上の諸制度は因縁あって栄え、そ して因縁あって滅ぶという歴史上の真理に基づきます。ロータリーもその例 外でなく、興隆期と衰退期がありました。過去をさかのぼり歴史の上から歯 車の軌跡を追って見ましょう。
 まず1930年から1945年にかけてロータリーはアメリカ社会から絶大な尊敬 と信頼の目を持って迎えられました。何か確固とした実践の軌跡を残したに 違いありません。アメリカは民間主導の福祉社会だから、労力と時間を割い てボランティア活動をするということはアメリカの国民にとって当然のこと であり、別に尊敬と信頼の目を持って迎えられるということはありません。 またロータリーが為すべきことでもなかったでしょう。ではいったい職業倫 理の提唱団体として具体的に何をしたのでしょうか。ロータリーが出来た時 アメリカの経済社会に、同業組合は1つもありませんでした。これをロータ リーは作っていきました。公共に奉仕する現代の「ギルド」の復活です。こ のことは商工会議所を倫理を提唱する団体として蘇らせました。この2つは ロータリーがアメリカ社会に残した最大の功績なのです。これこそがロータ リーの「職業奉仕」の原点なのです。ではどうしてロータリーは同業組合を 組織できたのでしょうか。我々は1業1会員制の原則に基づいて、同業者の 中から選ばれてロータリーの会員になったと思っています。しかしロータリ ーはそのようには考えません。ロータリーの会員は同業者の中から選ばれた のではなく、各々の業界にロータリーが派遣した大使(使節)であると考えま す。ロータリーの大使の役目とは、ロータリーの奉仕の理想をロータリアン 以外の人にシェアーすることが目的です。したがってロータリアンは同業組 合を組織して、ロータリー倫理訓(1915年)を基にした企業行動のあり方、職 業倫理基準を提唱し広めていったのです。関東大震災の時に東京壊滅すると いう電文を見て直ちに、当時RIのなけなしの25,000ドルという大金を送って くれたガイ・ガンディカーRI会長はレストラン経営に携わっていました。そ こで全米レストラン協会を組織してその会長となり、道徳的なレストラン経 営の倫理基準を作成しました(余談ですが、ケンタッキーフライドチキンの 店頭に立っている白髪の等身大の人形、カーネルサンダースさんの胸にもロ ータリーの徽章があります)。
 このようにロータリアンの数だけ同業組合が組織され、商業道徳の高揚は 著しいものがありました。この結果ロータリーに対するアメリカ社会の信用 が高まり、ロータリーは爆発的に発展するようになりました。

 このことは大変立派なことですが、そこでロータリーは1つの重要な過ち を犯すようになったのを知るのは残念です。ロータリー思想は世代の交代に 失敗したということです。1947年ポール・ハリス没後、RIの職業奉仕委員会 は廃止されました。ポールの死を悼んでPH・フェローができました。世界 中のロータリアンから莫大なお金がロータリー財団に集まります。財団が事 業を始めました。事業には莫大な資金が必要です。RIは人類の続く限り、ひ とりでも施主の多からんことを望み、$1でもお布施を増やし、限りなく永 遠に金をつぎ込んでいかねばならぬ「火の車」からおりられなくなりました。 職業奉仕はRIでは死語となりました。そもそもロータリークラブの会員を奉 仕という点で訓練しようとする実験としてのみ考慮されていた対外的な奉仕 活動がロータリーの拡大とともに、次第に会員個人から切り離され、奉仕活 動それ自体の論理だけが推進力となって1人歩きを始めました。職業奉仕が ないがしろにされ刹那的な人道的国際ボランティア活動が主流となりまし た。アメリカでは1950年、ヨーロッパでは1960年、日本では1965年を超える と「実践」が「原理」から離れて独り歩きを始め、ロータリー運動はまさに 虚飾性を強めるに至りました。ロータリーの組織もこのような制度疲労によ り会員減少が目立ってきました。職業奉仕の無いロータリーは魂の抜けた空 洞です。
 ガバナーとして公式訪問の際、ロータリーの真髄、職業奉仕の哲学を説か ずにただ会員増強と財団寄付のお願いだけなら各クラブを個別訪問する意味 がありません。職業奉仕を軽視してボランティア団体に重点をおくRIの方針 に悩みました。しかしあきらめていたロータリーに起死回生の救世主が現れ ました。ビチャイ・ラタクルRI会長です。国際協議会で「ロータリーは何億 人の弱者に救いの手を差し伸べてきた。これは偉大なことです。しかしそれ はあくまで外面的なことです。奉仕の実践の源となる奉仕の心の涵養という 内面的なこと、つまりロータリーの金看板である職業奉仕を我々は忘れてし まっていた。なんと恥ずかしいことか」。そして国際協議会で職業奉仕の再 構築の重要性を熱くガバナーエレクトに話されました。職業奉仕という言葉 は近年の歴代RI会長にとってはタブーでした。しかしラタクルさんのアドレ スはロータリーの1番大切なものは職業奉仕の再構築にあるということを世 界中のロータリアンに伝える勇気あるメッセージでした。1000人を超えるガ バナーエレクトと配偶者は感動のあまり、熱烈なカーテンコールはやみませ んでした。ラタクルさんのおかげで色あせたロータリーの歯車はまた輝きを 取り戻しまわり始めました。

 3月20日、そのラタクルさんが福岡西RCで講演をされるという知らせが、 同期のガバナーからあり勇んで駆けつけました。講演終了後、数人のロータ リアンとラタクルさんを囲んで夕食をともにしました。席上、ロータリーの 現況と将来ビジョンを歯に衣きせぬ口調で明快に示されました。特にCLPに ついてはロータリーの綱領、すなわち四大奉仕が希薄になるので各クラブは CLPの採用をくれぐれも慎重に検討して欲しいと云われたことが深く印象に 残りました。深い思索、全人格を傾倒してロータリーを語られるラタクルさ ん、最も敬愛するラタクルさんが遠い札幌から良く来てくれたと握手をして 頂いたことは、私にとって生涯忘れられぬ思い出となるでしょう。2700地区 の廣畑ガバナーありがとうございました。

 会長・幹事さん、我々の年度はまもなく終りますがロータリーの歯車は 回り続けます。どうか有終の美を飾って良き伝統を次年度に引き継いでくだ さい。



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